あちこちで木香バラが咲く季節は、
通勤途中の道がいつもよりちょっと楽しみになる。
美しく手入れされた庭に咲いているものより、
ほったらかしにされて、わぁっと咲き乱れている方が、
伸び伸びと生命力に溢れていて好きだ。
花を眺めて歩くこと、これも私のサムシングのひとつ。
人生は良いことばかりじゃないけれど、
そうじゃないからこそ感じられる
小さな優しさがあるんだと思う。
例えば、美しい音楽と共に蘇る思い出や匂いが、
自信のない背中を見透かしてふわっと支えてくれる瞬間の、
自分は自分でしかないのだなぁだと気がつく感じ。
例えば、夕焼けが身体にじんわりと染み入ってきて
微かに痛みを伴う瞬間の、心が揺さぶられる感じ。
気をつけて、そこに気持ちを向けていないと、うまく掴めない。
美しい花の色や形も、心に寄り添う音の響きも、
見上げればいつでもそこにある空も。
世界はたくさんの魔法に溢れているってことを、気づかせてくれるサムシング。