バゲットの、おもひで。

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バゲットを食べるたび、
思い出すことがある。

子どものころのこと。

学校の
社会見学で
パン工場を訪ねる機会があり、

事前に
パンについての
授業があった。

目の前に
いつも給食で食べている
食パンと
一切れのバゲットが並べられ、
どんな風に違うか
観察して発表する、というものだった。

いつもなら
恥ずかしくて
じっと下を向いてやり過ごすのだが

そのときは
どうしても
伝えたくて、
挙手。

珍しかったせいか
名前を呼ばれて、答える。

「食パンは押さえても戻らないけど
こっちのパン(バゲットのこと)は
戻ります」

つまりは弾力がある、ということを
伝えたかったのだ。
その発言は先生にとても褒められた。

今となっては
先生はもしかしたら
グルテンの話に持って行きたかったのかな、
なんて思ってしまうのだけれど、

あまり褒められるという経験のない身にとっては
ささやかながらとてもうれしく、
それから
バゲット、というパンは
ちょっと特別なパンになった。

それなりに
歳を重ねて
あらためてバゲットを
観察してみると、
当時気づかなかった
素敵な発見がある。

トーストしたときの
すばらしい香りと、
音、だ。

バゲットは
ぱちぱちと
うたうのだ。

買って帰って
軽くあぶっただけでも
こうして聴くことができるのだもの、

お店のオーブンから
出てきたときの
バゲットたちといったら、
きっと
しあわせな香りのなかで
それこそ大合唱なのだろうなぁ。

想像するだけで
子どものころの体験も相まって、

こころが
なんだか、
ふんわりとしてくる。

やっぱり、
バゲットは
特別な、
こころうれしいパン。

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バゲット・バタール 各¥320
毎朝10時30ごろに
パチパチと音を立てて
焼き上がります。

 

 

愉快なパスタ。

その日は、
なにか
いつもと違うもの、
味わったことのないものを
食べたい、と
思っていた。

たくさんの
メニュウが書かれた
黒板を、
上から下へ
ながめる。

シチリア風スパゲッティ、の文字に
目がとまる。
きけば、サフランと魚の
スパゲッティだとか。
通常は鰯だけれど、
その日は鯖だそう。

かくして
目の前にあらわれたのは、
黄金色のスパゲッティ。
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サフランのエキゾチックな香り、
魚の旨みに
レーズンの甘みと
ナッツの食感。
口の中が
とっても楽しい!

こういうとき、
思わずほくそえんでしまうのだけど、
ひとに見られると恥ずかしいので
黙々と、しかし
静かに興奮しながら
ゆっくり、じっくり
味わって食べる。

富山のトラットリアで、
シチリアの料理を
食べているというのに、
なぜかトルコの古いうたが
脳内再生される。

ああ、愉快だなぁ。

すてきなものは
いつだって、
こうして軽々と
あらゆるボーダーを飛び越えて、

キアズマしていくんだね。

 

music of sandwich lover

ローラ・ニーロ「Oh Yeah Maybe Baby」
ローラ・ニーロは
晩秋の頃、肌寒くなると聴きたくなる音楽。
これから
クリスマスにかけて、
暖かいお部屋で読書でもしながら、
あるいはクルマの中で聴きながら
あてもなく走るのも良いでしょう。

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リュスティックで挟んだ
コッパのサンドイッチ。
コッパは豚の肩肉で作った生ハム。
噛むほどに
スパイシーな香りと旨味が
口内に広がります。